もくじ
こういうチューナーって、今でも使うんですかね。
僕が吹奏楽部だった10年以上前(かなしい🥺)は、もう必需品。合奏に忘れようもんなら、先生にバレないように隣の子に貸してもらったものです…懐かしい。
今や、チューナーすらもスマホアプリでできる時代なので、そんな文化もないの…?とか考えてます、どうもはらいちですお願いします。
さて、吹奏楽部の皆さんなら、「純正律」って聞いたことありますかね。
僕も中1の頃に先輩に教わって初めて知ったのですが、
ドミソをピアノで弾いても、実は綺麗なハーモニーじゃない!!
綺麗にするには、ミの音をちょっと低くしないといけない!!(ソもほんのちょっと高くしないといけない!!)
と知ったとき、僕は雷を打たれたような衝撃を受けましたね。
小さい頃ほんのちょっとピアノをやっていた僕にとって、”ドレミファソラシド”という揺るぎない音階、音程。
ドミソ、ファラド、ソシレ。揺るぎない完璧で綺麗な和音。
そう疑いもなく信じていた僕にとって、純正律という概念は意味がわかりませんでした。
というか、音楽やってない人からしたら意味わからないですよね、コレ。
もしかしたら、音楽やってても純正律という概念を知らない人も結構いそう。
実際、中学生の僕も意味がわからず、
ほーん、ドミソのミのときはちょっと低くすればええのな。
あ、ドミbソとかの短調のときのミbは高くするんだ。へんなの、そういうもん??
というくらいでした。
ということで今回は、昔の自分でもわかるように、
なんでそんな面倒なことをしないといけないか??という話をして行きますよ。
まずは、体感しましょうか。平均律と純正律。
とてもいい動画を見つけたので、まずはこちらを聞いてみましょう。ちょーわかりやすい。こんな違うんかってなります。
平均律ってなんやねん。
上の動画の冒頭で、とっっっても面白いことを言っていました。
みてない方のために説明すると…
ドとソが綺麗に響くとき、音の振動数の比率は2:3という綺麗な比になっています。
実際、ピアノの真ん中のドは261Hz(ヘルツ)、その上のソは392Hzらしいです。
261 × (3/2) = 391.5 なので、確かに大体2:3ですね。
そして、ドとソの関係は、ソとレの関係と同じです(完全5度)。なので、ソとレも振動数の比率は2:3になります。
これを12回(ドソ,ソレ,レラ…….ミbシb,シbファ,ファド)繰り返すと、最初のドより7オクターブ高いドの振動数が計算できます。
(もし最初のドが32Hzとすると、ソは1.5倍の48Hzだし、レはその1.5倍の72、ラは108、ミは162…という具合で、戻ってくるドは4152くらい、時計さんできます。)
でも、最初のドと最後のドを一緒に鳴らすと、オクターブで綺麗になるはずなのに、うねってて汚かったんです。
同じ音なのに、不協和音になっちゃう。
調べてみたら、24セントもずれていたんです(100セント違うとちょうど半音の差になるので、結構ずれてる)。
ここに、純正律と平均律のキモとキモさが凝縮されているのです。
ちょっと確かめてみましょうか。本当に24セント違うか。
興味なかったら次の見出しまで無視してOKです。
最初のドの振動数を、100Hzとしましょうか(実際は違いますが問題ありません)。
ソが1.5倍の150Hz、レがその1.5倍の225Hz…というふうにやっていくと、戻ってくるドは約12974.6Hzになります。(正確には100×1.512Hzです)
最初のドと最後のドは7オクターブ違います。
(家に88鍵のピアノがある人は、いっちばん左のドからはじめて、完全五度で右に進んでみてください、いっちばん端っこのドに帰ってきます!)
1オクターブ上の音は、振動数が2倍になります。
なので、7オクターブ違うと、128倍振動数が違う。つまり、最初のドが100Hzの時、最後のドは12800Hzのはずです。….
お。
完全5度を経てたどり着いたドは、12974.6Hzでしたね。
なのに、オクターブ(完全8度)を経たドは、12800Hz。
ぜんぜんちがーう。
実際これは24セントずれているんです。
それを確かめるには下のちょっと難しい式を使います(みたい人はみてね)。
セントとは、ある音の振動数の、基準となる音とのズレを表します。
ちょうど半音ずれているときのズレを100として表します。ある音A(Hz)が、基準となる音B(Hz)とどのくらいズレてるかをセントで表す時、以下の式を使います(導出はメンドイので省きますが、12√2とか出てきて面白いです。)。
音のズレ具合(セント)=1200×log2(A/B)
上の、12800Hzと12974.6Hzを代入してみると、
1200×log2(12974.6/12800)=23.455…となり、12975Hzの方が、12800Hzと比べて約23.5セントずれている(高い)ことがわかります。
(チューナーってこんなむずい計算してたんですね…)
(この約23.5セントのズレは、ピタゴラスコンマ、と呼ばれています。ぜひググってみてね。)
さて、気を取り直して。
めでたく、ちゃんと24セントずれていることがわかったところで。
ドとソは、振動数の比が2:3で綺麗。
ドと1オクターブ上のドも、振動数の比が1:2で綺麗。
なのに、上の計算でもわかったように、この2つはどうあがいても噛み合わない、、、という問題が起こってるんです。
(ここでいう、綺麗というのは、純正律としての完璧な響きのことですよ。)
さあどうしようということで、ピタゴラスをはじめとするいろいろな数学者が悩んだ結果、
めちゃくちゃ平たくいうと、オクターブの振動比である[1:2]、これがズレるのが一番やばいから、これに合わせちゃお、
ということになりました(実際もっとごちゃっとしてるので色々語弊ありそうだけど、こんな理解で十分です)。
要は、1オクターブ上の振動数は2倍になって、間に12個の半音を挟むから、12等分に割っちゃおう!
まあ、そうするとドとソの振動比が2:3じゃなくなっちゃうけど….そこまで気にならないし、妥協した感はあるけどアリっしょ!!
ということです。
均等というと、誤解が生まれかねないのでちょっと補足。
ある音が1200Hzだとそのオクターブ上は2400Hzになりますが、12等分だから1200,1300,1400,…,2300,2400Hzという単純な話ではないのです。
振動数と音の高さは指数関数の関係なので、単純に振動数を12で割っちゃマズいのです。
じゃあどうしてるかというと、半音1個上がったとき振動数を12√2倍(1.0595倍くらい)してあげれば、半音12個分で(12√2)12=2になってめでたくオクターブになるので均等に12等分できたことになります。
そう、上の動画でも触れられていますが、平均律は妥協の末に生まれたものなんです。
下のドと上のドのウネリを無くそうとした結果、
ドに対するソや、ミ、ミbなど、、、(いや、ド以外の全部。)
の完璧に綺麗な純正律の和音が犠牲になったのだ、、、、
と言うのが、平均律の生まれ持った運命なのです。
だから、平均律で作る和音って、もともと綺麗な和音じゃない。
だから、吹奏楽や管弦楽など、簡単に音程をずらせる場合には、本来の完璧な純正律の響きに戻してあげてるんです。
あえて音程を悪い方にずらしてるわけじゃないんです。
だって、平均律がもうズレてんだもん。既に。
(余談ですが、ピアノなど平均律で調律してある楽器を含む音楽形態では、純正律など考えなくてよくなります。吹奏楽からビッグバンドはじめて、一番びっくりしたのはここ。)
じゃあ、どのくらいズレ修正しないといけないの??
というと、このくらい。
ルート以外全部やんけ!といいたくなりますが、
平均律が、どれだけの思いで妥協してるかが伝わってきますね…
これは、Bbに対する表ですが、よくみると…
Bbに対するメジャーの3音であるDは、13.7セント低くとる。
Bbに対するマイナーの3音であるDb(C#)は、15.6セント高くとる。
さーて、最初のチューナーの画像をよーくみてみましょう。
0の左右に、不気味な位置の▼が2つありますねぇ。
小さい⚫︎ごとに2.5セントずつ、大きい●ごとに10セントずつズレるから、、、
勘の良い人はお分かりですね。
左の▼は-13.7セント、右の▼は+15.6セントにちゃーんとなってる!!
(これ、吹奏楽部入って1年くらい、なんで左右非対称なとこに▼あんだろ、へんなの、としか思ってなかったなんて言えない)
あとよく使うのは、
完全五度の+2.0セント、長7度の-11.7セント、短7度の+17.9セントくらいでしょうか。
ちょっと補足。
ちょっと別角度からも話してみます。
平均律は、半音どうしの振動数比は、どこもずっと12√2倍(≒1.0595倍)で一定です。
なので、オクターブなら純正律と平均律ともに振動数比は1:2になるのですが、
ドとソだと(純正律では綺麗な2:3でした)、平均律では振動数比は1:(12√2)7=2:2.9966になり、綺麗な2:3とちょっとズレちゃうのです。
冒頭では、ドとソが2:3で、オクターブが1:2だと言いましたが、ちょっと他の音との振動数比もまとめてみましょう。
ドと… | 純正律での振動数比 (左はドの振動数の値) | 平均律での振動数比 (左はドの振動数の値) |
---|---|---|
ド# | 15:16 | 15:15.8919 |
レ | 8:9 | 8:8.9797 |
ミb | 5:6 | 5:5.9460 |
ミ | 4:5 | 4:5.0397 |
ファ | 3:4 | 3:4.0045 |
ファ# | 32:45 | 32:45.2548 |
ソ | 2:3 | 2:2.9966 |
ソ# | 5:8 | 5:7.9370 |
ラ | 3:5 | 3:5.0453 |
シb | 5:9 | 5:8.9090 |
シ | 8:15 | 8:15.1020 |
上のド | 1:2 | 1:2 |
いやー、とても興味深いですね。
平均律の方は、12√2という無理数を何回もかけてるだけなのに、こんなに綺麗な整数比に近付いてるとこが面白い。
先ほどのこの表(↓)の値の増減と、上の表がちゃんと対応してるのもポイントです。
(ドとレの場合、平均律だと8:8.9797と純正律の8:9よりちょっと足りないので3.9セント高くとる、逆にドとシの場合は8:15よりオーバーしちゃってるので11.7セント低くとる、みたいな。)
さらにこの表から、純正律の時の、3和音の振動数の比率もわかってしまいます。
こんな感じ。
メジャーの和音(ドミソ)….4:5:6
マイナーの和音(ドミbソ)….10:12:15
sus4の和音(ドファソ)….6:8:9
augの和音(ドミソ#)…20:25:32
dimの和音(ドミbソb)…160:192:225
メジャーセブンスの和音(ドミソシ)…8:10:12:15
セブンスの和音(ドミソシb)…20:25:30:36
こうみると、綺麗な響きほど、比に出てくる数字が小さいって言えそうじゃないですか?
これってめちゃくちゃ面白くて、
「人間が綺麗と思う響き」っていうモヤモヤとした概念だったのに、数学的にも綺麗だ、と証明されてることになるんですよ。
…と、ちょっと熱くなってしまいましたが、
こんな綺麗な比率の和音も、純正律あってのもの。
平均律の場合、どの和音もすべての比に12√2とかいう無理数の倍数が出てくるので、こんな綺麗な整数にはなりえません。
(平均律のドミソの場合、1:12√(24):12√(27)なので4:5:6ではなく4:5.0397:5.9932になってしまいます。)
この平均律のズレを修正するために、吹奏楽部は頑張って純正律に直しているのです。
決して、純正律にするために音程をずらしてるわけじゃない、ということだけ覚えておいてくださいね。
ただ、今日の話を覚えておくと、
「ほーん、3音は低くするのね〜」とだけ思っていた昔の僕とは違い、
パート練や合奏、アンサンブルなどでめちゃくちゃ応用が効くようになります。
純正律の響きを制したものがハーモニーを制し、ひいてはコンクールの結果やうまさに直結します。
ここに書いてあった話を、何も言わず部活の友人に説明できますか?????
何度も読み返しては、人に説明できるくらいにマスターしちゃいましょう。
では〜!
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ご連絡遅くなりました! ブログにコメント頂きありがとうございます!
大変申し訳ないです。マイナーコードの説明記事作成は予定されていないです…
様子をみて別の形での作成も検討していきますね。ありがとうございます!